私たちウィメンズネットこうべは、これまでシェルター運営や啓発活動など
DV被害者に対する支援やシングルマザーに対する支援を行っています。
私たちはそうした活動の中で、高卒資格がないことで、
安定した仕事や希望した仕事につけないという女性たちをたくさん見てきました。
実際に、ある調査では、女性で大卒20歳代の正社員率が7割を超えるのに対して、
高卒は5割に届かないぐらい、中卒の女性では3割を切るという分析がされています。
そこで、内閣府「地域における女性活躍推進モデル事業」として、
シングルマザーや若年女性の高卒認定資格取得や専門学校受験などを支援するプロジェクトを企画し、
2015年9月から約5ヶ月間、「WACCAスクール」として試験的に実施することとなりました。
DV被害女性、シングルマザー、若年女性を対象に、定期的な学習支援を提供します。 支援だけでなく、保育付きの学習の場も提供します。またキャリア相談などの各種相談や、当事者向けのセミナーも随時行っています。詳細やスケジュールはWACCAのサイトをご確認ください。
1日5人、5か月で延べ150人の参加を目標としています。またボランティア学習会なども合わせて行い、困難な状況にあってもキャリア形成をめざす女性たちを支援する 人的ネットワークをこの期間中に作りたいと考えています。
「教えて先輩!女性のためのキャリア探しカフェ 」を開催しています。
資格を取りたい、働きたい、勉強したい方向けに、実際にそのキャリアを積んでおられる女性を講師に招き、お話を伺います。
講師:Kさん 現在保育専門学校に通学中、来年の4月からの就職も決まっています
現在40代、子どもが3歳の時に離婚。幼稚園の教諭資格を持っていたが、幼稚園は若い人が多く、結婚したら辞めるという風潮だった。
離婚した当初はとにかく働かなければという事で、コンビニにパート勤務。2年働き、店長とのお話もあったが、いつまでもパートなど不安定な仕事のままでは、不安だった。
ハローワークに通い、なんとか正職で働ける職場を探した。そこで職業訓練としての保育士の仕事を発見した。保育士の仕事は、幼稚園より、年配まで働く人が多く、また勤務年数も長い。また保育園だけでなく、福祉の分野など就職の広い選択肢があることを知った。
保育士の資格をとる方法にはいろいろある。独学で国家資格を取る方法。しかしそれは狭き門でかなりの努力を要する。大学や専門学校に行く方法は、確実だがお金がかかる。
通信教育の道もあるが、自分の意志が固くないと継続するのが難しいなどの理由があり、 学校に行く方法を選んだ。しかしお金はないので、ハローワークで職業訓練の方法をとった。授業料など全額無料になるほか、生活費として月10万円支給される。(現在は制度が変わっているので確認の必要あり)現在はアルバイトで補充しながら生活している。
保育士の仕事は、決して給料が高いわけではないが、正職員になる可能性がある。給料は安定する、社会保険、健康保険が付く、などの待遇のところで働きたい。コンビニのバイトをして強く思った。
3月卒業予定だが、保育園の就職が決まっている。
現在通っている保育専門学校は、高校卒業した若い学生から、50代まで幅広い年齢層の方が通ってきている。
先生方も個性的な方が多く、職員室はオープンで、何時も生徒たちが出入りしている雰囲気。生徒たちも人数が多くないため、皆の動きがわかり、気持ちがわかりあえる。1年生20名2年生16名が卒業予定[18名入学だが途中退学2名]
朝7時から夜7時まで、交代で勤務。体調チェックから、朝礼、子供の状態をみるというところから始める。午前中は体操、おやつなど。その後遊び、昼寝など。
現在の学校では保育士の資格しか取れない。しかし保育士の資格をもっていれば就職した後、単位をとれば保育教諭になる方法もあるので、有利な形で資格取得は可能。
現在は30%ほどの合格率だという事だ。ただ3年以内に単位をすべてとればいい。学校を卒業すれば、国家試験は免除となる。
保育実習が6月5日間 9月体験実習 、施設実習が2年の6月10日間9月の10日間ある。障がい者施設、乳児院など保育所以外に努める希望の方もおり、去年は4分の1くらいが社会福祉の分野に就職した。
入学金、授業料などすべて免除されるうえに、10万円の支給があった。[現在は制度が変わっているのでハローワークに相談して現在の状況を確かめてほしい] その代わり、いろいろな制限がある。事前の財産や預金の調査もある。出席も80%以上の出席が要求される。病欠の場合は診断書をもらって対応。しかし経済的な支援を受けて勉強できて確実に資格が取れ、就職できるのはありがたい。 私見は作文と面接。「どうして保育士になろうと思っているか」などがきかれる。
初めてピアノに挑戦する人も多い。大丈夫、在学中に練習すれば卒業までは何とかなる
講師:Oさん 看護師として働いて2年目。33歳。子どもは6歳の女の子が一人。
結婚はできちゃった婚。こどもが1歳半の時別居、5年前離婚。相手の男性は居酒屋をしていた。相手が多額の借金をしていて、それを知らせなかった。将来に不安もあったが、子どもが生まれたので、父親がいないよりいいか、という感じだった。私の旧姓を使って借金しようとしたので、これは離婚も考えなければと思った。子どもが生まれてから半年の間、子育ては全くしてくれなかった、子どもの面倒もみてくれない、生活費も渡してくれないことが続いた。妊娠して、妊婦検診の時もお金がなかった。
とりあえず実家に帰った。すぐにできる仕事を探したがあるはずがない。「看護師はどうや」と親に勧められた。27歳で受験。最初は社会人枠を受験した。定員が若干名とあったが、150人受験していて、おそらく6,7人くらい合格。見事面接で落ちた。そこで一般で受験することにした。受験科目は、国語と数学か英語。看護学校の予備校のようなところがあるが、お金もかかるし、1歳未満の子どもがいて到底無理。自分で勉強することにした。看護学校を受験するための参考書を3冊買い、ひたすらその3冊を広告の裏に必死で書いて勉強した。子どもの昼寝の時間にわかるまでひたすら勉強した。2つ受けてどちらも合格。面接で聞かれるのは、子どもがいる場合は「サポート体制は大丈夫ですか?」だった。
学校入学時 子どもは1歳2か月。保育園は、申し込んだが就職していないので認可保育園に入れなかった。結局無認可を見つけていれた。月5,6万保育園にかかった。生活費、入学の費用と、お金がかかったが、それもこの際親に頼ろうと思った。私の場合、それが恵まれていた。
学費は年間60万 入学当初、設備費なども入れて130万程かかる。 。
母子世帯が、国家資格を取るためにお金を支給してくれる、145000円もらえる制度があったが、離婚していないのでもらえなかった。当時調停中で、入学したときは未だ旧姓だった。調停5,6回して不成立となり、結果協議離婚。学校を休んで裁判所に行き、ようやく離婚が成立。
看護学校時代は、実習がとてもきつかった。月火水金 と病院へいき、期間は3週間。3年は5月から3週間、いろいろな病院に行かされる。9時~5時までびっしり。交通費も自己負担。そのころは離婚が成立していたので、母子の支援金の半分7万もらえた。月5万円くらいの学費は払えたのでありがたかった。保育園が空いていないので、実家の世話になった。学校で出会った友達の存在が大きい。いまでも子連れで集まってわいわいやっている。
実は1年留年している。さまざまなプレッシャーから、心身の不調をきたし、鬱になった。夜中2時3時に起きてそのまま実習にいくという生活が続いていた。鬱になって、科目を落として1年留年。
親もプレッシャーだった。十分に応援してくれているのはわかっているだけに、親にしんどさを打ち明けられない。親に言えずにに、スーツを着て学校に行くと言って家を出てマクドナルドに行っていたこともある。
切り替えられたのは、ようやくそのつらさを親に言えたこと。親のプレッシャーにきづいて、別居しようと思い、市営住宅を申し込んだら、幸運にも実家の近くのところがあたった。家を出てから、留年したことを話した。
学校に行っている間も当面の生活費を稼がなければならない。兵庫区の病院にヘルパーとして働いていた。そのうち薬も飲まずに なんとか行けるようになった。5か月間働いて4月から学校に復帰した。
4月から、アルバイトしていた病院に正職の看護師として就職した。
勤務は2交代。9時から5時15分の早出、 4時15分から9時45分が遅出。夜勤も週1回くらいこなしている。子どもは実家に預けて。実家に近い小学校に通っている。
働いている病院が子育て経験者が多いので、理解があり、ありがたい。
夜勤手当1万5000円でるので夜勤は外せない。1年目20万 貯畜で親に借りた分を返している
生活のための 生活の安定がある。発泡酒ではなく、ビールが飲めるようになったというくらいの。もともと人が好きという事もある。病院に対する組織の不満はあるけれどこの仕事は続けていきたい。
看護学校でも40代の人は結構いる、シングルマザーも結構多い。一番多かったかったのは30代。自分だけじゃないんだなと思える。どうしようかなと迷っている人は、頑張って受けた方がいい。看護師のライセンスあるだけで幅が広がる。
2015年12月19日(土)13時~16時、シンポジウム「女性と子どもの貧困の連鎖を断ち切るために"私たちができること"」を、兵庫県立男女共同参画センターセミナー室において開催しました。
ルポライターの杉山春さんによる基調講演「取材から見える女性と子どもの貧困」、神戸学院大学現代社会学部神原文子氏、神戸学院大学総合リハビリテーション部石田賀奈子氏による報告、また神戸学院大学経済学部田宮遊子氏をファシリテーターに迎えたシンポジウムからなる 2 部構成で実施。
特定非営利活動法人すまみらい鏡味秀彦氏、およびWaccaの茂木からこのプロジェクトの実施報告もさせていただきました。
会場には当初の予定を超える約120名の方にご来場いただきました。
このテーマに対するみなさまの関心の高さに心強い思いです。引き続きご協力のほどよろしくお願い致します。みなさまありがとうございました。