女性の視点からの緊急時・復興への提言
女性の視点からの緊急時・復興への提言


女性の視点からの緊急時・復興への提言
NPO法人女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべ       2011年3月20日
       
三段階に分けて考えるべき。
1) 短期的:今すぐに行うこと(救援・避難)
2) 中期的:これからおこなうこと(生活再建)
3) 長期的に行うこと(地域再建)→まだまだ先で読めません。



すぐに行うべきこと(救援・避難)
1. 避難所・被災世帯において、安全・安心・快適な空間を確保し、特に女性のプライバシーを守ること。
そのために
(ア) 性別に配慮して避難所には次の部屋を確保する(授乳室、保育室、男女別更衣室・洗濯物干し場)
(イ) 単身の女性などを対象に女性専用の部屋を設ける(見守りの体制があること)
(ウ) トイレは、男女別とし、男女トイレの比率は1:3とする。
(エ) 避難所内の警備やトイレを安全な場所に設置するなど、女性や子どもを性被害から守るよう配慮する
(オ) トイレ周辺は24時間照明する
(カ) 避難所で調理室や洗濯場などが生活の場として利用できるように配慮する
(キ) 避難所における掲示物などに、多言語または絵文字など誰にでもわかる表現方法を使用する


2. 乳幼児をかかえた母親に対する子育て支援を行い、児童虐待を防止すること
(ア) 在宅・避難所を問わず妊産婦のための食べ物、健康管理の相談を開設する
(イ) 妊婦検診や乳幼児健診・育児相談・支援が行われることで母親の不安を軽減させる
(ウ) 保育室の開設は、保育者のストレスを減らし、虐待防止になる

3. 災害時に「女性に対する暴力(DV・性被害)」が増加することを予測し、以下の対策をとること。市街地だけでなく、避難所、仮設住宅でも性被害は発生する。災害後は家庭内におけるDVの増加や保護命令の申請の増加などが海外の調査では報告されている。
(ア) 避難所に男女別の相談窓口(女性のためにはクリニックや助産師によるからだ相談が望ましい)を開設する

(イ) 性暴力・DVホットライン(24時間のフリーダイヤル)や面接相談を開設し、支援情報を周知する(女子トイレなどに連絡先を書いたカードを置く、ポスターを張るなど)

(ウ) 避難所の運営委員会が、性暴力を毅然と阻止できるように、運営委員会に「災害時における性暴力の阻止」に関する情報提供を行う

(エ) 各自治体は医療機関の中に性暴力被害者救援センター(性被害に対応できる医師や看護師が配置する、緊急避妊ピルなどを準備する)を設置、一時保護施設が通常施設以外にも用意される

(オ) 避難所における女性や子どもの状況に関する調査をすみやかに実施して、実態を把握し、支援につなげる。性暴力やDVの増加に関しては、未だにその事実を疑う人も多いため、支援がスムースに行われない可能性がある。
(「被災地における性暴力」〜防止と対応マニュアル 2008年全米性暴力情報センター発行・ウィメンズネット・こうべ監訳をぜひ参考にしてもらいたい)

4. 多様性への配慮を行う
(ア) 在宅の被災者・障がい者・視聴覚障害者にも情報や物資がもれなく届くよう配慮する

(イ) 災害時、その後の被災者救済において、外国籍であるかどうか、在留資格の如何を問わず、被災者として扱う(出身地によって文化が異なるので、被災者のニーズに配慮した支援をおこなう)

(ウ) 性的マイノリティの被災者のニーズに配慮した支援をおこなう。

5. 支援者に対するジェンダー研修を行う。
(ア) 医療従事者(医師、看護師、こころのケア)とその他のボランティアに対してジェンダー研修を行う

6. 上記のことが確実に実行されるために、以上のような事柄の知識をもった女性が避難所の運営委員会に加わる。男性だけの避難所運営では、上記のような視点は忘れ去られてしまう。
(ア) 避難所の運営委員の中に女性が必ず参加する

(イ) 被災者の中の自治的組織(班など)が形成されるときにも、男女が班のリーダーを担うように促す。

(ウ) 地元の女性団体、男女参画センターなどに登録しているNPOが避難所の運営を支援できるように、連携を図る。

7. 被災地の県単位または市町村単位の自治体で、女性やマイノリティの視点から活動している団体のネットワーク作りを支援する。効果的に情報を共有して、外部支援を含めた支援活動を円滑にし、長期的な復興に女性やマイノリティの視点を取り入れる仕組みを早いうちから作っておく。



中期的:これから行うこと(生活再建)
1. 各被災自治体において、生活再建(住居の確保、就業機会の確保、義捐金や被災者生活再建支援法による支援金の支給など)やより長期的な復興の施策を決定する委員会に女性が参画する。


2. 仮設住宅や被災地外の公営住宅などへの入居について女性やマイノリティが不利にならないようにし、そこでの生活を安全なものとする。行政は仮設住宅でのDVや性暴力防止や発生時の相談窓口などの支援体制を施策に入れておくこと。
(ア) 仮設住宅の入居審査や割り振りに関する業務担当者に女性を含める。

(イ) 入居に際して、高齢者・障がい者と共に、ひとり親家庭(父子世帯・母子世帯)、妊娠中の女性や乳児のいる家庭を優先する。

(ウ) 仮設住宅や公営住宅に移動した後は、特に独居者(男女とも)への支援体制を作る。

(エ) 避難所と同様、安全・安心・快適な空間が確保されるよう、仮設住宅の運営委員会には、女性が参加する。
(オ) 住居を失って住居の確保が困難な被災者に対して、居住の権利を保障すること

3. 被災者支援や支援金の給付は世帯単位とせず、個人を単位とすること

4. 心のケアに関しては、長期的に取り組むこと
(ア) 心とからだのケアなど被災女性のための相談窓口を開設し、女性の健康問題に取り組む

5・災害時に女性が仕事を失わないための施策や支援を行うこと
(イ) 災害時には災害特別休暇(保育・介護のためなど)が男女ともに取得できるようにする
(ウ) 災害を理由に不当に解雇された女性に対する労働相談を速やかに開設する
(エ) 母子家庭や離職した女性の生活再建のため、経済支援や雇用の創出を早急におこなう

5. 災害ボランティアへのジェンダー研修を行う。
(ア) 今回の災害は広域で、復興に必要な時間も長くなると思われるため、大量の一般災害ボランティアが被災地を訪れることになると思われる。それらのボランティア・リーダーに対してジェンダー研修を行う。

(イ) ジェンダーや多様性に配慮した災害ボランティア活動に関するパンフレットを作成して、社会福祉協議会やボランティアセンターに周知する。

6. 被災地の県単位または市町村単位の自治体で、女性やマイノリティの視点から活動している団体のネットワークを通して、女性やマイノリティの避難所での生活や生活再建状況をモニタリングするシステムを作る。

7. なお、県外への一時避難者に関しても、被災地における支援と同等の支援が必要である。


3の長期的に行うことの骨子は
1. 防災・復興に関する対策を国・自治体レベルで見直し、そこに性別・年齢・障がいのあるなしを問わず、人権尊重を基本にし、意思決定に女性を参画させ、女性の視点を取り入れる仕組みを作ること
2. 地域の復興計画(まちづくり)の政策策定、地域における意思決定に女性が参加する仕組みを作ること