DVを知る・逃れる

知っていますか?DVのこと

DV(ドメスティックバイオレンス)とは、夫婦や恋人など、親しい関係にあるパートナー間で起こる暴力のことです。男性が被害者になることもありますが、特に深刻な身体への暴力や性的な暴力では、女性が被害者になるケースが圧倒的に多いのが現状です。 2023年の政府の調査では、結婚している女性の4人に1人がDVを経験しており、そのうち6人に1人の女性は、命の危険を感じるほどの暴力を受けていることが報告されています。また、警察の統計(2011年)によると、パートナー間で起こる犯罪のうち、殴る・蹴るなどの「暴行事件」や「傷害事件」では9割以上、命を奪う「殺人事件」でも半数以上が女性の被害者です。

どんなことが「暴力」なの?

暴力というと、殴る・蹴るといった行為を思い浮かべることが多いかもしれません。

しかし、DVにおける暴力はそれだけにとどまりません。

精神的な苦痛を与えることや、性的なこと、お金に関する問題、さらには社会生活を制限することなども暴力に含まれます。

身体的暴力

殴る、蹴る、引きずり回す、物を投げつける、首を絞める、髪を引っ張るなど。

心理的暴力

大声で怒鳴る、悪口を言う、脅す、無視する、長時間の説教、物を壁や床に投げる、刃物を見せるなど。

性的暴力

嫌がっているのに性的な行為を無理やりさせる、避妊に協力しないなど。

経済的暴力

生活費を渡さない、働くことを許さない、借金を無理やりさせたり、相手が借金をするなど。

社会的暴力

行動を制限する(例: 外出させない)、友達に会わせないなど。

インターネット・テクノロジーを使った暴力

位置情報アプリで監視する 、リベンジポルノなど。

このような暴力は、人が人間らしく安心して生活したり、自分に自信を持ったり、自由に活動したりする権利を奪ってしまうものです。

DVと心に与える影響について

DVの被害を受けると、体にあざや傷が残るだけでなく、目に見えない心の傷を負うことがあります。

この心の傷は深く、癒えるまでに長い時間を要します。

暴力が繰り返される環境では、常に不安と緊張の中で過ごすことになり、心と体の両方に大きな負担がかかります。
被害を受けた人は、「自分が悪いから暴力を受けている」「もっと我慢すればうまくいくかもしれない」といった誤った思い込みを抱きやすくなり、自責の念に苦しむことがあります。
その結果、気分の落ち込みやうつ傾向、無気力、子どもの世話への困難など、日常生活に影響が生じる場合もあります。 DVによって、次のような心理的・社会的影響がみられることがあります。

  • 安心感を失い、自分を尊重できなくなる。
  • 自分を責める気持ちが強くなる。
  • 抑うつ状態や不安症状があらわれる。
  • 子どもの世話や家事など、生活行動が難しくなる。
  • 強い孤独感や無力感にとらわれる。

これらの影響は、暴力がもたらす「支配」と「恐怖」によって心の自由が奪われている状態でもあります。
回復には、安心できる環境と周囲の理解、そして時間が必要です。

なぜ、逃げられないのか

DVの被害を受けている人が、その状況から逃れることは容易ではありません。
その背景には、いくつかの現実的な制約や心理的な要因があります。

まず、安全な避難先が見つからないことが挙げられます。
家を出ても、実家や友人の家が加害者に知られている場合、避難先を知られる危険が高く、身を守ることが難しい状況に置かれることがあります。

次に、加害者からの脅迫があります。
「誰かに話したら許さない」「別れたら殺す」など、直接的な脅しを受けているケースも多く、暴力がさらに激化するのではないかという強い恐怖から被害者が行動に移せない場合も多いです。

経済的な問題も大きな要因です。
十分な生活費が渡されない、働くことを制限される、家計を把握できないなどの状況では、逃げるための資金を確保することさえ困難です。

また、子どもがいる場合には、「子どものために父親が必要なのではないか」と考えたり、子どもの生活や将来を心配したりして、離婚や別居をためらうケースも少なくありません。 これらの複合的な要因により、DVの被害者が加害者のもとを離れることは、身体的にも心理的にも極めて難しい選択となります。
安全な避難環境、経済的自立への支援、そして社会的理解が不可欠です。